「先生はきっとお子さんの頃、楽しい塾に通っていたのでしょうね。そうでなければ、塾の先生になりたいなんておっしゃらないと思います」
というお言葉をいただきました。
たしかに、毎日が楽しい。授業が楽しい。生徒に会えるのが楽しい。
でも、答えはNo!です。
さて、私の『初めての塾』についてのお話——
キッカケは、ある夏の頃。少年S(私)は父親にこう言われたのです。
「S、お前はこの夏、リトルリーグの野球チームに入るか、塾へ行って勉強に力を入れるか、どちらかにしなさい。どちらかにしないと、お前はこの家から追い出されることになる」
にべもない父の一言。典型的な亭主関白で昔気質な父に当時の少年は絶対服従なワケです。
少年Sは悩んだ挙句、塾へ行くことにしました。なぜなら、小学校6年生までやっていた好きな野球も、中学生になったら頭を坊主頭にするという当時の流儀がどうしても受け入れられなかったからです。
さて夏休み、緊張のあまりお腹を痛めながら重い足を引きずって、町田市内の小さな駅前の塾へ行きました。たしか薄っぺらいテキストで、国語か英語の授業を受けていました。
先生はニキビ面だけど優しい口調の大学生。でも、私には声はかけてくれません。一方で、10人ほどのクラスの中にいた女子生徒たちと、授業のほとんどの時間ずっとキャーキャーおしゃべりをしています。
耳を傾けると、どうやら先生の引っ越しに女子生徒のファンがお手伝いに行くらしく、授業中その段取りについて楽しそうに盛り上がっています。完全に門外漢な私。授業もそっちのけ。
すると突然、教室のうしろのドアがガチャリ。
な、なんと! 竹刀を持って頭には白いハチ巻きをした背の高いおじさん(おそらく塾長)が目を吊り上げて入ってきたのです。
「いいか、お前ら! 夏を制する者は受験も制す! 寝る間も惜しんで、一に勉強、二に勉強、三、四がなくて、五に……云々」
あまりの傍若無人ぶりな2人の教師。そして、そのギャップ。
私はこの塾で何を勉強したかは記憶喪失。
——そして、誓いました。
『塾の先生には、ゼッタイにならない!!』 と。



